大津由紀雄 第2代会長からの挨拶

第2代会長挨拶

大津由紀雄

大嶋百合子前会長を引き継ぎ、このほど、言語科学会会長に就任いたしました。小椋たみ子副会長、新運営委員ともども、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

言語科学会は、様々な言語科学の研究をとおして人間の言語の理解に貢献するという目的をかかげて1999年にJCHAT言語科学研究会として発足いたしました。言語獲得データの国際的な共有システムであるCHILDESに日本語のデータベースを構築することを目的として始められたJCHATプロジェクトのアクティブ・メンバーの貢献によって会が発足したという経緯から、会の日本語名称にはJCHATという名称がつけられました。そして、発足から2年経ちそろそろ研究会から学会へ発展を図る必要性が叫ばれるようになりました。これを受けて、大嶋前会長のリーダーシップのもと、前運営委員会を中心とするメンバーの献身的な尽力により、この脱皮に必要な準備がなされ、さきごろ日本女子大学生田キャンパスで開催された第三回年次大会において、学会名の変更、目的条項(会則第二条)の改正が賛成多数で可決されました。

言語科学会は、「言語の理論的・実証的研究をとおして、言語科学の発展に資するとともに、人間理解に貢献すること」(会則第二条)を目的とした学会です。そのスコープはこの規定によってのみ制約を受けますので、言語理論(音韻論、形態論、統語論)、第一言語獲得、第二言語獲得、言語理解、言語産出(発話)、母語教育、外国語教育、自然言語処理、脳科学、バイリンガリズム、社会言語学、談話研究、言語哲学など、きわめて広範囲に及びます。本学会は、こうした広範囲のスコープに関連する研究を行っている研究者がそれぞれの専門領域に留まることなく、広い視野からの問題意識を持ち、関連領域の研究者と積極的な意見交換を行うことを支援いたします。

言語科学会は、言語科学の実践をとおしての人間理解という共通の問題意識を持つ人々のための場です。そこには、日本国内、国外という垣根は存在しません。その認識に立ち、本学会は真の意味での「国際的」学会を目指しています。会員の多くは「国際的」な研究活動を行っており、本学会はそれを積極的に支援しています。年次大会での発表論文や論文集の掲載論文の査読にあたっては、国内外を問わず、関連する研究領域で活発な活動を行っている方々に依
頼しています。また、年次大会での発表は日本語あるいは英語のいずれででも可能です。学会のホームページをはじめ、広報活動の多くを日本語と英語の両方で行っています。このような学会の「国際性」は理念的には望ましいものであっても、その実践は容易ではありません。本学会はこれまでの経験をとおして、この点に関するかなりのノウハウを蓄積しています。今後も試行錯誤を重ねながら、よりよい環境を実現していきたいと思います。

当面の課題について触れておきます。まず、運営委員会の運営方法を再検討しなくてはなりません。本学会は、日本の他の学会と異なる特色を多々持ち合わせているため、さまざまな局面で新たな対応を迫られます。その対応にあたるのは主として運営委員会ですが、より効率的な運営を図るための方法を検討します。とくに、電子メールによる議論と議決の方法について一定のガイドラインを定め、無用な混乱を防ぐようにしたいと思います。

つぎに、財政基盤の安定化を計らねばなりません。本学会の財政基盤はきわめて軟弱です。安定した財政基盤がないと、学会そのものが存亡の危機に瀕することになります。その安定化に向けて必要な方策を議論しなくてはなりません。

この二つの課題をはじめとして、本学会が抱える重要課題について、定期的に会合を開き、討論を重ねる必要があります。そのために、事務局長と常任運営委員会を新たに設置します。常任運営委員会は、会長、副会長、事務局長、および会長の委嘱する運営委員若干名より成るものとし、会合は当面年間4回程度の開催を予定しています。なお、常任運営委員会は議決権をもたず、議決が必要な項目については、その討論結果を運営委員会および必要に応じて総会に開示し、議決を求めるものとします。

最後に、学会運営にあたって、ミニマリズムの精神に徹底したいと思います。すなわち、本会の運営にあたっては、できるだけの省力化を計ります。体裁にこだわらず、実質をとると言い換えてもかまいません。学会としてやらなくてはならないことに集中し、やらなくてもよいが、やったほうがよい、という程度のことはしないという方針です。これまで本学会は会長、副会長を含む運営委員の方々のまことに献身的な努力によって支えられてきました。今後もみなさんの積極的なご協力を切望いたしますが、わたくしたちはあくまで研究者であって、学会運営のプロというわけではありません。学会運営のために研究活動がおろそかになるというのでは本末転倒です。ミニマリズムの徹底によって、会員のみなさんにご不便をおかけすることも多々あるかと思いますが、どうぞご理解の程、よろしくお願いいたします。

言語科学会への変わらぬご支援と会員の皆さんの学会活動への積極的な参加をお願いし、ご挨拶といたします。
(2001年9月)