[:ja][終了しました]第3回「HiSoPra*研究会(歴史社会言語学・歴史語用論研究会)」のご案内[:]


[:ja]第3回 「HiSoPra*研究会(歴史社会言語学・歴史語用論研究会)」のご案内
    HiSoPra*: HIstorical SOciolinguistics and PRAgmatics

日時:2019年3月28日(木)、13:30~17:50(開場は12:45~)  

場所:学習院大学 北2号館(文学部研究棟)10階、大会議室
   http://www.gakushuin.ac.jp/mejiro.html の15番の建物

参加費:500円(資料代等)

総合司会:小野寺典子(青山学院大学)、森 勇太(関西大学)

 13:30-13:40 (総合司会者による) 導入

 13:40-14:25 《研究発表》 
  朱 冰(関西学院大学 常勤講師):
  「中国語における禁止表現から接続詞への変化」
  司会:堀江 薫(名古屋大学)
  (発表要旨については、本案内文の下方を参照下さい)

 14:35-15:20 《研究発表》
   片見彰夫(青山学院大学 准教授):
  「イギリス宗教散文における指示的発話行為の変遷」
  司会: 堀田隆一(慶應義塾大学)
  (発表要旨については、本案内文の下方を参照下さい)

 15:50-17:50 特別企画 《鼎談》
 「諸言語の標準化における普遍性と個別性 ―〈対照言語史〉の提唱」
  田中克彦(一橋大学 名誉教授)
  寺澤 盾(東京大学 教授)
  田中牧郎(明治大学 教授) 
  司会:高田博行(学習院大学)、堀田隆一(慶應義塾大学)

本鼎談では、モンゴル語、ロシア語、英語、日本語という個別の言語の歴史を専門とされる3人の言語学者の先生方に登壇願い、社会の近代化に伴い各言語が辿ってきた標準化の歴史に関してお話しいただきます。個別言語の歴史を対照することによって、標準化のタイミングと型、綴字の固定化や話しことばと書きことばとの関係等に関して言語間の相違のほかに、言語の違いを超えた共通性が浮かび上がってくると思われます。言語史研究者が新たな知見を得て、従来とはひと味もふた味も違った切り口で各個別言語史を捉え直す契機のひとつになれば幸いです。 

 18:30-20:30 懇親会
会費4000円(学生は2500円)、会場はJR目白駅すぐ

++

 研究会に参加下さる方は、下記フォームを利用し、ご記入の上、
HiSoPra*研究会事務局(hisopradesk@gmail.com)に、3月25日(月)までにご送信下さい。

   ==============================
   HiSoPra*第3回研究会 参加申し込みフォーム
    お名前(ふりがな):
    ご所属:
    ご専門(領域):
    メールアドレス:
    懇親会に 参加します・参加しません(どちらかをお消し下さい)
   ===============================

(発表要旨)

朱 冰(シュ・ヒョウ):「中国語における禁止表現から接続詞への変化」

中国語では、禁止(否定の命令)は、主に動詞の前に“?”、“不要”といった禁止マーカーを入れることによって表される。これらの禁止マーカーは、以下のように一部の動詞との組み合わさり、文法化を経て接続詞に変化した。
1)禁止(例:别说「~と言わないで」、别提「~に触れないで」)>
尺度添加「~は言うまでもなく」
2)禁止(例:别看「~を見ないで」) > 譲歩「~にもかかわらず」
3)禁止(例:别管「~に気にかけないで」)>
譲歩条件「~であろうとなかろうと、どんなに~であろうとも」
例えば、“别说”は、もともと禁止マーカー“别”と発話動詞“说”(「言う」)の組み合わせで、「~と言うな/と言わないで」という意味の禁止表現であるが、一語化し、英語のlet
aloneや日本語の「~と言うまでもなく/まして~なんて」に近い尺度添加を表す接続詞となっている。命令表現が複文(例:譲歩節、条件節)を構成する現象は、通言語的に観察されている。日本語の「~にせよ」や「~にしろ」といった譲歩を表す接続表現も動詞「する」の命令形に由来するものであると考えられる。
 しかしながら、中国語のように、禁止表現から接続詞に転成する現象は、これまでの類型論研究ではあまり報告されていないようである。本発表は、朱(2018)、Zhu
and Horie (2018)
における考察を踏まえ、禁止マーカーと発話動詞の組み合わせに由来した接続詞を例として、その通時的な成立過程を分析した上、このような接続詞は[[禁止マーカー+発話動詞]等位接続

[尺度添加]]という構文スキーマに基づく拡散的変化によって生じたものであると主張し、文法的変化における類推の重要な役割を強調する。

参考文献
朱 冰(2018)「中国語のモダリティ表現の接続詞化と談話標識化に関する通時的構文文法的研究
-日本語との対照を交えて-」名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士論文,2018年1月
Zhu, Bing and Kaoru Horie (2018). ‘The development of the Chinese scalar
additive coordinators derived from prohibitives: A constructionist
perspective’ In Hancil, S., T. Breban and J. V. Lozano (Eds.), New
Trends on Grammaticalization and Language Change, pp. 361-380.
Amsterdam: John Benjamins.

片見彰夫(カタミ・アキオ):「イギリス宗教散文における指示的発話行為の変遷」

本発表では,指示的発話行為の変遷について論じる。聴衆や読み手の教化,意識や行動の改善を主な目的とする宗教散文における指示的発話行為について,文脈に基づき生起状況を調べる。言語資料としてイギリスの14世紀から18世紀にかけての宗教散文に着目をする。書き手はどのようにして読み手(聴衆)を教義へと誘おうとしたのであろうか。
 14世紀は修道士のみならず,より広い大衆を対象とした宗教散文が広まった時代である。その一群としてJulian
of Norwich, Walter Hilton, The Cloud -author, Margery
Kempeを取り上げる。通時的視点から,17世紀に広く読まれ,小説文学勃興の気運を作ったイギリス国教会の流れを汲むBunyanによるPilgrim’s
Progress,さらに18世紀におけるメソジスト派の創始者John
Wesleyの著書を考察する。
 Wierzbicka (1987)
にもあるように,指示行為動詞は,対人間相互作用や,書き手(話者)による自らを取り巻く世界観を理解するうえで重要である。しかし,宗教散文におけるその働きについては十分な先行研究が従来なされてかなかったといえよう。発話行為動詞,命令,非人称構文,法助動詞を中心に考察するが,比喩や,スキームといった修辞技法の果たす効果についても述べる。

                                  以上
[:]