日本言語科学会(JSLS)第1巻論文集序文より
日本言語科学会(JSLS)は、人間の言語を理解するという共通の目標を掲げる広範囲な学術分野の研究者を結集することを目的として、1999年8月に発足しました。本学会は異なる分野および異なるアプローチをとる研究者の間の科学的な交流と議論を推進するために年1回大会を開催し、その発表論文集を刊行します。本巻は、この目的を十分に達成したものと確信しております。本学会のスコープは、第一言語・第二言語習得、言語処理、言語障害、音声知覚、音韻論、意味論、統語論、語用論、談話、バイリンガリズム、社会言語学、神経言語学、比較言語学などのトピックが含まれます。さらに、年2回、電子形式のニュースレターを発行する予定です。
JSLSは以下の点で日本の他の学術団体と異なります。第一に、言語学、心理学、教育学、第二言語教育、音声・コミュニケーション科学など多様な分野の研究者による知的交流と議論の場を提供します。第二に、JSLSは日本の学会でありながら、日本に限らず国際的な学会を目指しています。世界中の研究者間の国際的な学術交流を促進するため、英語と日本語のバイリンガルフォーラムを提供します。 当学会のホームページ(http://jchat.sccs.chukyo-u.ac.jp/JSLS/)は日本語と英語のバイリンガルで運営されています。学会発表は日本語または英語で行われ、論文集もどちらの言語でも掲載可能です。また、論文の査読においては、国内外を問わず最も適任な専門家に依頼するよう特別な努力を払っています。
言語科学の新学会を発足する構想は、1997年に東京で開催されたJCHAT/CHILDESチュートリアルワークショップの一環として、CHILDES(Child Language Exchange System)を用いた第一言語・第二言語習得研究者のための研究フォーラムが開催された際、JCHAT日本CHILDESプロジェクトの活動メンバーの間で生まれました。このフォーラムには多様な学術グループの研究者が多数参加し、言語習得に関する学際的な知的交流と活発な議論をする刺激的な機会となりました。 当時、日本においてこのような機会はほとんど存在しなかったため、JCHATプロジェクトの活動メンバーは協力して新学会の発足に取り組みました。学会名「JCHAT言語科学研究会」はこの歴史を反映しています。しかし、新学会のスコープはJCHAT/CHILDESツールやデータベースを用いた研究に限定されていません。 むしろ、本学会の基盤は、言語学、心理学、音声科学、神経科学、教育学など異なる分野から得られた知見を統合しなければ、人間の言語の複雑な性質を理解できないという共通認識にあります。この取り組みを成功させるためには、より多くの分野からの参加が必要です。学会を発展させるため、異なる分野からの会員の積極的な参加を歓迎します。国際的かつ学際的な連携・交流を促進する今後の活動に関するご提案・ご意見をお待ちしております。
大嶋百合子
会長
モントリオール、2000年7月
