[終了しました]第8回共創言語進化セミナー(米納弘渡氏)見逃し配信 (3/3まで)


新学術領域「共創言語進化」http://evolinguistics.net/ 主催の第8回共創言語進化セミナー見逃し配信のお知らせをさせていただきます。ご興味のある方、ぜひご参加下さい。
(なお、第9回「自閉症は津軽弁を話さない」(松本敏治氏、2/22開催)については、http://evolinguistics.net/event/#event1292 をご参照下さい。)

第8回共創言語進化セミナー 見逃し配信
タイトル: 言語と言語能力の共進化に対する構成論的アプローチ
(Constructive approach to the co-evolution of language and linguistic ability)
講演者: 米納弘渡 (名古屋大学大学院 情報学研究科 複雑系科学専攻 特任研究員)

言語 : 日本語
配信期間: 2021/2/15(月)12:00-2021/3/3(水)15:00
申込サイト: https://forms.gle/dV5WqcLUNZm1nJw69
概要 :
人類の言語能力は,言語それ自体の文化進化(古英語から英語への変化など)と,言語使用に必要な言語能力(高い認知能力に必要な脳容量,多様な音声のための声帯など)の生物進化の相互作用で創発してきたと考えられる [Azumagakito 2018, Smith 2018].また,言語には,思考能力の拡張とコミュニケーション能力の拡張の2側面があり[Harman 1975, Reboul 2015],それぞれ本領域の中心テーマである階層性と意図共有に対応する.
これらの異なる時間スケールと機能的側面が関わる相互作用を理解する上で,各構成要素の要点を抽出し組み合わせたモデルを「創って動かすことで理解する」構成論的アプローチが有用である.本講演では,言語と言語能力の共進化に関する次の2つの構成論的モデル研究を紹介する.
言語と言語能力の共進化において,学習は両者をつなぐ重要な役割を果たしてきたと考えられる.そこで,言語能力は多数の下位機能による創発的特性であるとの観点に基づき,複雑な形質間相互作用を想定した個体学習と社会学習の進化モデルを構築した[Yonenoh 2019].各個体は整数の形質値を複数持ち,言語の認知的側面(自身の持つ形質構成)とコミュニケーション的側面(相手個体を含めた形質構成)において,より多数の相互作用が存在するほど適応性が共創的に(相乗的に)生じる.実験の結果,学習は適応進化を促進しうること(ボールドウィン効果)や,社会学習(適応的情報の共有)と個体学習(試行錯誤的な新奇情報獲得)が相補的に働くことが重要であることなどが示唆された.
言語の起源は共同狩猟や死肉あさり等の協力的な資源獲得が関係してきたと指摘されている[Bickerton 2011].一方,人類社会は当初の有限で物質的な資源から,知識などの無限に複製可能な情報的な資源を共有するよう変化しているといえる.そこで,次の構成論的モデルを構築した[Yonenoh 2020, in press].極座標(動径:表現力,偏角:構造)で表現された言語空間上に各言語が点で表現される.各生物は扇型の領域(可塑性)で表され,領域内に存在する言語を共有する個体間で共同資源を獲得し分配される.資源有限性,言語の表現力,共創的利益,認知的競合,可塑性維持コストに基づく適応度で生物集団が進化すると同時に,言語使用に応じて言語集団も文化進化する.実験の結果,言語の表現力と生物の言語能力が断続平衡的に増加する様子が観察され,資源有限性の減少(情報化)は言語の適応進化を促進するが,多様化を抑制する傾向があることなどがわかった.
最後に,将来のコミュニケーションのあり方に対するこれらの知見からの示唆について検討する.

参考文献:
– Yonenoh, H., Suzuki, R. and Arita, T. (2019), Effects of individual and social learning on the evolution of co-creative linguistic communication, Artificial Life and Robotics, 24: 534-541.
– Yonenoh, H., Suzuki, R. and Arita, T. (in press), A shift from material to informational aspects of shared resources can promote language evolution, Advances in Artificial Intelligence (8 pages).

米納弘渡氏について:
2016/3 筑波大学大学院システム情報工学研究科修了。社会経済博士。東京大学大学院工学系研究科特任研究員を経て、2018/4より現職、新学術領域「共創言語進化」C01創発構成論班研究員。言語進化・協力の進化・金融市場を対象に、複雑系科学(部分と全体)と進化ゲーム理論の観点から、実験経済学、エージェント・シミュレーションの手法で研究を行う。

共催:科学研究費補助金基盤研究(B)「再帰的結合と身体性を基盤としたアブダクションによる他者意図推定の研究」