[終了しました]第9回共創言語進化セミナー(松本敏治氏)のお知らせ 2/22 15:00 Zoom


新学術領域「共創言語進化」http://evolinguistics.net/ 主催の第9回共創言語進化セミナーのお知らせをさせていただきます。ご興味のある方、ぜひご参加下さい。
(なお、第8回は2/11(木)の夕方開催を予定しています。内容が固まりしだいアナウンスいたします。)

第9回共創言語進化セミナー
タイトル: 自閉症は津軽弁を話さない
(Autistic children rarely talk in Tsugaru dialect)
講演者: 松本敏治(教育心理支援教室・研究所 ガジュマルつがる 代表)
言語 : 日本語
日時 : 2021/2/22 (月) 15:00-17:00 (少し延びる可能性あり)
申込サイト:https://forms.gle/ykUwFbL9L3WKtKHz7
概要 :
青森県津軽地方の保健師・特別支援教育関係者の間には「自閉症は津軽弁を話さない」という風聞が存在する。これをきっかけに行った全国調査では、ASD児者の方言使用が少ないという印象が全国で見られる普遍的なものであることを示した。また、青森・高知の特別支援学校で行った方言語彙・共通語語彙使用の調査は、ASD児の方言語彙使用が非ASDに比べて少ないとする結果を示した。方言には相手との心理的距離の近さを表す働きがあることから、ASD児者の方言不使用は心理的距離の理解不全によるのではないかという解釈が考えられた。しかし、この解釈ではASD幼児に見られる方言不使用を説明することは難しい。方言主流社会の子どもは、周囲の人々が話す方言とテレビ・DVD等メディアからの共通語という2つのことばに曝されている。共同注意・意図理解・自己化などに困難を抱えるASD幼児では周囲のことば(方言)を習得できず、繰り返し再生視聴可能なメディアや組織的学習を通じ場面とことば(共通語)をパターンとして結びつけている可能性が考えられた。関西在住のASD青年に関する詳細な育児日誌からは、DVDの場面を再現しながらセリフを真似し、現実場面に当てはめて使用する様子が確認された。また、それまで共通語を話していたがある時期から方言を話すようになった事例においては、方言使用の前後から他者への興味・関心が増し、対人的認知スキル等において伸びが見られた。本講演ではこれら一連の研究をもとにASD児者の言語習得および使用について考察する。

参考文献:
– 松本敏治 (2017) 自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く. 福村出版. 文庫版 (2020) 角川ソフィア文庫.
– 松本敏治 (2020) 自閉症は津軽弁を話さないリターンズ コミュニケーションを育む情報の獲得・共有のメカニズム. 福村出版.

松本敏治氏について:
公認心理師、特別支援教育スーパーバイザー、臨床発達心理士。
1987年、北海道大学教育学研究科単位取得退学、1999年、博士(教育学)取得。1987-1989年、稚内北星学園短期大学講師。1989-1991年、同助教授。1991-2000年、室蘭工業大学助教授。2000-2003年、弘前大学助教授。2003-2016年9月、弘前大学教授。2011-2014年、弘前大学教育学部附属特別支援学校長。2014-2016年9月、弘前大学教育学部附属特別支援教育センター長。
2016年10月より、発達障害当事者の会である教育心理支援教室・研究所『ガジュマルつがる』代表。
発達障害児・者の支援に取り組みながら、自閉スペクトラム症児・者の方言使用からみた言語・コミュニケーション特性の研究に従事。