新学術領域「共創言語進化」http://evolinguistics.net/ 主催の第10回共創言語進化セミナー見逃し配信のお知らせをさせていただきます。ご興味のある方、ぜひご視聴下さい。
(なお、第11回「自閉症児の韻律:韻律音声学手法を用いた解析からみえてくる特性」(馬塚れい子氏、4/2開催)については、http://evolinguistics.net/event/?id=event1442 をご参照下さい。)
第10回共創言語進化セミナー見逃し配信
タイトル: ショウジョウバエを用いた全脳神経回路コネクトーム解析
講演者: 伊藤 啓 (独ケルン大学理学部動物学教室神経解剖学・実験形態学講座 教授 / AXAチェア)
言語 : 日本語
配信期間 : 2021/3/17 (水)~4/5(月)15:00 JST
申込サイト: https://forms.gle/1owwU1BLH1P9fYis7
概要 :
感覚情報の入力から運動制御の出力に至る脳の情報処理の全体像を理解するには、脳内の特定の一部の領域だけでなく、脳全域の神経回路構造の解明と、それぞれの回路要素が果たす役割を理解することが重要である。キイロショウジョウバエは、脳が縦横数百ミクロンと小さく、神経細胞が数万個と少なく、特異的な少数の神経で遺伝子発現を誘導する手法が発達しているため、このような研究に適している。膨大な手間をかけた電子顕微鏡連続切片画像の撮影と神経トレースによる初めての全脳コネクトームデータも昨年完成し、我々は脳中心部にある2万個の神経データを形態とシナプス結合パターンで分類して、5,600種の神経を同定した。遺伝子発現誘導系統を用いた光学顕微鏡による解析では、標識した神経の全構造を可視化できるだけでなく、毒素遺伝子やチャネル遺伝子を発現させてその神経の機能を操作し、行動実験で影響を解析することも可能である。しかし全神経の網羅的同定は難しく、また光顕ではシナプス結合の詳細は分からない。電顕では全神経を網羅的に同定でき、シナプス結合も解析できるが、細かい神経分岐を全て同定するのは難しい。また電顕データでは行動学的、生理学的解析はできない。光顕と電顕の両方を機動的に組み合わせた今後の研究の手法を紹介する。
参考文献:
– Scheffer LK, Xu CS, Januszewski M, Lu Z, Takemura SY, Hayworth KJ, et al. A connectome and analysis of the adult Drosophila central brain. eLife. 2020, 9, e57443. doi: 10.7554/eLife.57443.
– Tsubouchi A, Yano T, Yokoyama TK, Murtin C, Otsuna H, Ito K, Topological and modality-specific representation of somatosensory information in the fly brain, Science. 2017, 358, 615-623. doi: 10.1126/science.aan4428
伊藤啓氏について:
1991/3 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻終了。理学博士。独マインツ大学研究員、基礎生物学研究所助手、東京大学分子細胞生物学研究所准教授等を経て、2015/10より現職。大量の遺伝子発現誘導系統スクリーニングによる神経細胞の体系的同定法を創始して、ショウジョウバエ脳の神経回路の全貌解明を進める。