「過去のニュース」カテゴリーアーカイブ

[終了しました]第11回共創言語進化セミナー(馬塚れい子氏)のお知らせ 4/2 17:30 Zoom

新学術領域「共創言語進化」http://evolinguistics.net/ 主催の第11回共創言語進化セミナーのお知らせをさせていただきます。ご興味のある方、ぜひご参加下さい。

なお、第10回「ショウジョウバエを用いた全脳神経回路コネクトーム解析」伊藤 啓氏)は4/5まで配信予定です。
(第10回の講演内容→ http://evolinguistics.net/event/?id=event1419 、視聴申し込み(後日登録開始)→ https://forms.gle/1owwU1BLH1P9fYis7

第11回共創言語進化セミナー
タイトル: 自閉症児の韻律:韻律音声学手法を用いた解析からみえてくる特性
(Intonational Phonology can shed light on the nature of prosody in Japanese children with ASD:
Dissociating linguistic and para-linguistic aspects of intonation)
講演者: 馬塚れい子 (理化学研究所 脳神経科学研究センター 言語発達研究チーム チームリーダー)

言語 : 日本語
日時 : 2021/4/2 (金) 17:30-19:00 JST (少し延びる可能性あり)
申込サイト: https://forms.gle/X8KfZj9SovqcRQY99
(Zoom情報の通知方法が変わり、登録後すぐにメールが届くことになりました。お見落としがないようメールをご確認下さい。)

概要 :
自閉症児の発話はその韻律が不自然だと言われるが、対話者の印象に基づく記述的な報告が多く、定型児と比較してどこがどう異なるのか、また非定型な韻律が自閉症の他の特性とどのような関連があるのかについては不明な点が多い。我々の研究では、発話の韻律のうち単語のアクセントや、発話の長さなどの言語特性で決まる言語的側面と、話者交代のタイミングや強調の程度など、他者との社会的コミュニケーション
によって決まるパラ言語的側面を区別し、それぞれの特性について高機能自閉症児と定型児を比較した。その結果、言語的な要因で決まる韻律特性では、自閉症児は定形発達児と比較して全く差がみられなかった。これに対し、自然対話におけるパラー言語的な側面では、不自然だと判断された箇所が定型児に比べて5倍以上確認された。
特に、韻律のパラ言語側面の不自然さの生起回数には自閉症児、定型児を含めた対象児全体で大きな個人差があることもわかった。この個人差が、自閉症児、定型児の自閉傾向と何らかの関連があるのかを調べた。聴覚的驚愕反応は、自閉症のバイオマーカーとしての有効性が議論されているが、本研究に参加した自閉症児と定型児の聴覚驚愕反応を計測すると、その結果と韻律のパラ言語的の不自然箇所数が高い相関を示すことが分かった。これらの結果から、自閉症児の発話の韻律の不自然さは言語的な問題ではなく、自閉症のコアな症状である社会的、対人関係の困難に起因するものであり、それが自閉症の生理的指標であると言われる聴覚的驚愕反応と高い相関を示すことからも確認されたことを示す。

馬塚れい子氏について:
Duke大学心理学部の講師、Assistant Professor、Associate Professorを経て、2004年より現職。Duke大学 心理神経学部 Research Professor、早稲田大学 応用脳科学研究所、中央大学研究開発機構 客員研究員、東京大学IRCN Affiliated Faculty。新学術領域「共創言語進化」B03認知発達班研究協力者。科研費特別推進研究「アジアと欧米:コミュニケーションの文化差から言語の獲得過程を探る」研究代表者。日本語の音声獲得を通して人の脳発達のメカニズムを探り、そして、子供の言語理解は大人とどう違うかを探求している。

[終了しました]第10回共創言語進化セミナー(伊藤啓氏)のお知らせ 3/16 17:30 Zoom

新学術領域「共創言語進化」http://evolinguistics.net/ 主催の第10回共創言語進化セミナーのお知らせをさせていただきます。ご興味のある方、ぜひご参加下さい。

なお、第9回「自閉症は津軽弁を話さない」(松本敏治氏)は3/15まで配信予定です。
(第9回の講演内容→ http://evolinguistics.net/event/?id=event1292 、視聴申し込み→ https://forms.gle/dV5WqcLUNZm1nJw69  )

第10回共創言語進化セミナー
タイトル: ショウジョウバエを用いた全脳神経回路コネクトーム解析
講演者: 伊藤 啓 (独ケルン大学理学部動物学教室神経解剖学・実験形態学講座 教授 / AXAチェア)
言語 : 日本語
日時 : 2021/3/16 (火) 17:30-19:00 JST (少し延びる可能性あり)
申込サイト: https://forms.gle/TS4SF1CXKgZ3m5di8
概要 :
感覚情報の入力から運動制御の出力に至る脳の情報処理の全体像を理解するには、脳内の特定の一部の領域だけでなく、脳全域の神経回路構造の解明と、それぞれの回路要素が果たす役割を理解することが重要である。キイロショウジョウバエは、脳が縦横数百ミクロンと小さく、神経細胞が数万個と少なく、特異的な少数の神経で遺伝子発現を誘導する手法が発達しているため、このような研究に適している。膨大な手間をかけた電子顕微鏡連続切片画像の撮影と神経トレースによる初めての全脳コネクトームデータも昨年完成し、我々は脳中心部にある2万個の神経データを形態とシナプス結合パターンで分類して、5,600種の神経を同定した。遺伝子発現誘導系統を用いた光学顕微鏡による解析では、標識した神経の全構造を可視化できるだけでなく、毒素遺伝子やチャネル遺伝子を発現させてその神経の機能を操作し、行動実験で影響を解析することも可能である。しかし全神経の網羅的同定は難しく、また光顕ではシナプス結合の詳細は分からない。電顕では全神経を網羅的に同定でき、シナプス結合も解析できるが、細かい神経分岐を全て同定するのは難しい。また電顕データでは行動学的、生理学的解析はできない。光顕と電顕の両方を機動的に組み合わせた今後の研究の手法を紹介する。

参考文献:
– Scheffer LK, Xu CS, Januszewski M, Lu Z, Takemura SY, Hayworth KJ, et al. A connectome and analysis of the adult Drosophila central brain. eLife. 2020, 9, e57443. doi: 10.7554/eLife.57443.
– Tsubouchi A, Yano T, Yokoyama TK, Murtin C, Otsuna H, Ito K, Topological and modality-specific representation of somatosensory information in the fly brain, Science. 2017, 358, 615-623. doi: 10.1126/science.aan4428

伊藤啓氏について:
1991/3 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻終了。理学博士。独マインツ大学研究員、基礎生物学研究所助手、東京大学分子細胞生物学研究所准教授等を経て、2015/10より現職。大量の遺伝子発現誘導系統スクリーニングによる神経細胞の体系的同定法を創始して、ショウジョウバエ脳の神経回路の全貌解明を進める。

CFP: The 29th Japanese/Korean Linguistics Conference (Nagoya U, October 2021)

Meeting Description:

The 29th Japanese/Korean Linguistics Conference (JK29), jointly hosted by
Nagoya University and the National Institute for Japanese Language and
Linguistics (NINJAL), will take place at Nagoya University, Japan, from 9 to
11 October 2021, with satellite events on 8 October. It should be noted that
JK 29 may be held as a virtual conference amid a pandemic. We are planning to
make a decision on whether JK29 will be a physical or virtual conference by
the end of June at the latest.

The JK29 organizing committee welcomes abstract submissions for 20-minute oral presentations, followed by 10 minutes for discussion, and for poster presentations.

Contributions to any aspect of Japanese/Korean linguistics, or comparison of these languages with other languages, are welcome. Comparative studies of Japanese and Korean are especially encouraged.

Deadline for abstract submission: May 8th, 2021, 11:59 pm (GMT)

Notification of acceptance: June 30th, 2021

Abstract guidelines:
• Abstracts must be anonymous and must present original research that has not been published.
• Abstracts should be written in English and not exceed two pages in total. References, examples and/or figures can be included on the second page. Alternatively, text examples can be incorporated in text to improve readability.
• Submitted abstracts must be in .pdf format, with Times New Roman font, size 12, 1 inch margins and single spacing on a A4 or letter size paper. The filename must be in the form Paper_title.pdf (e.g., Logical_structure_of_linguistic_theory.pdf).
• Do not include author names or affiliations in either the filename or the abstract itself.
• Authors may submit one abstract as first author, and may be co-author on no more than one additional abstract. In other words, one may be an author on up to two submissions, but first author on only one of those.

Abstract Submission:
Abstracts should be submitted as PDF files via EasyChair (the URL will be provided shortly).

When submitting your abstract through EasyChair, please enter the title of your abstract and type “the file uploaded” in the spaces under “Title and Abstract” (you do not need to enter your abstract there) and upload the PDF file of your abstract using “Uploads”. Please use the space under “Keywords” to (i) enter four/five keywords that describe the study; (ii) choose and enter one or two of the following eight categories for the abstract: (1) phonetics/phonology, (2) morphology, (3) formal/lexical semantics, (4) formal syntax, (5) pragmatics, (6) functional/usage-based linguistics, (7) sociolinguistics, including discourse, and pragmatic analyses, (8) historical linguistics, (9) psycholinguistics, and (10) other(s); and (iii) indicate the preferred mode of presentation (oral, poster presentation, or either).

Invited speakers:
Dr. Taehong Cho (Hanyang University, South Korea)
Dr. Bjarke Frellesvig (University of Oxford, UK)
Dr. Yuki Hirose (University of Tokyo, Japan)
Dr. Noriko Iwasaki (Nanzan University, Japan)
Dr. Peter Sells (University of York, UK)
Dr. Wataru Uegaki (University of Edinburgh, UK)

Organized by: Nagoya University & National Institute for Japanese Language and Linguistics (NINJAL)Organizing committee: Kaoru Horie (Nagoya U.), Haruo Kubozono (NINJAL), Kimi Akita (Nagoya U.), Yusuke Kubota (NINJAL), David Y. Oshima (Nagoya U.), Akira Utsugi (Nagoya U.)

Contact: jklinguistics29 ATSIGN gmail.com

[終了しました][Free Online Event in English] Elite Creativities – 批判的社会言語学(critical sociolinguistics)についての国際研究集会のご案内

For information in English, please click on the link below:
https://let-kansai-fmt-sig.blogspot.com/2021/01/march-6-2021-international-meeting.html

ベルン大学(スイス)の若手研究者をリモートで招いて、SNSの談話分析などの
手法を活用したelite
creativitiesについての批判的社会言語学(critical
sociolinguistics)研究プロジェクトの初学者にも分かりやすい発表会を予定し
ておりますため、ご案内いたします。主催者は外国語教育メディア学会(LET)
関西支部
基礎理論研究部会です。

– 日時:2021年 3月6日(土)例会:3:30PM-6:30PM (日本時間)
– 会場:オンライン開催(Zoom活用)
– 参加費:無料
– 言語:English
– フライヤー及びイベント詳細情報:
https://let-kansai-fmt-sig.blogspot.com/2021/01/march-6-2021-international-meeting.html

をご参照ください。

※下記リンクより事前参加登録が必要です:
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLScVD93Lba49bF1nJd3M80MhCYmJruthwtAbcERMSC2kF6ra7A/viewform

Presentation 1
The big business of creativity: A frame analysis of social media
influencers’ bricolage in advertising discourse.
by Olivia Droz-dit-Busset (Bern University, Switzerland)

Presentation 2
The rhetorics of creativity in professional language work: The case of
UX
writers.
by Lara Portmann (Bern University, Switzerland)

多くの方のご参加を、お待ちしております!

[終了しました]「第1言語としてのバイリンガリズム研究会(BiL1)」第22回研究会発表募集のお知らせ

第1言語としてのバイリンガリズム研究会(BiL1)では、5月に第22回研究会を「オンライン研究会」として開催することを決定いたしました。つきましては、本研究会の設立趣旨に沿った研究発表を募集しますので、奮ってご応募ください。

https://sites.google.com/site/bilingualismasa1stlanguage/をご参照ください)

第22回BiL1ONLINE callforpaper

[終了しました]第9回共創言語進化セミナー(松本敏治氏)見逃し配信 (3/15まで)

新学術領域「共創言語進化」http://evolinguistics.net/ 主催の第9回共創言語進化セミナー見逃し配信のお知らせをさせていただきます。ご興味のある方、ぜひご視聴下さい。

なお、第8回「言語と言語能力の共進化に対する構成論的アプローチ」(米納弘渡氏)は3/3まで配信予定です。
(第8回の講演内容→ http://evolinguistics.net/event/?id=event1348 、視聴申し込み→ https://forms.gle/dV5WqcLUNZm1nJw69 )

第9回共創言語進化セミナー 見逃し配信
タイトル: 自閉症は津軽弁を話さない
(Autistic children rarely talk in Tsugaru dialect)
講演者: 松本敏治(教育心理支援教室・研究所 ガジュマルつがる 代表)
言語 : 日本語
配信期間: 2021/2/26(金)12:00 – 2021/3/15(月)15:00 (JST)
申込サイト: https://forms.gle/3tsfBtdhQKduMKa87
概要 :
青森県津軽地方の保健師・特別支援教育関係者の間には「自閉症は津軽弁を話さない」という風聞が存在する。これをきっかけに行った全国調査では、ASD児者の方言使用が少ないという印象が全国で見られる普遍的なものであることを示した。また、青森・高知の特別支援学校で行った方言語彙・共通語語彙使用の調査は、ASD児の方言語彙使用が非ASDに比べて少ないとする結果を示した。方言には相手との心理的距離の近さを表す働きがあることから、ASD児者の方言不使用は心理的距離の理解不全によるのではないかという解釈が考えられた。しかし、この解釈ではASD幼児に見られる方言不使用を説明することは難しい。方言主流社会の子どもは、周囲の人々が話す方言とテレビ・DVD等メディアからの共通語という2つのことばに曝さ
ている。共同注意・意図理解・自己化などに困難を抱えるASD幼児では周囲のことば(方言)を習得できず、繰り返し再生視聴可能なメディアや組織的学習を通じ場面とことば(共通語)をパターンとして結びつけている可能性が考えられた。関西在住のASD青年に関する詳細な育児日誌からは、DVDの場面を再現しながらセリフを真似し、現実場面に当てはめて使用する様子が確認された。また、それまで共通語を話していたがある時期から方言を話すようになった事例においては、方言使用の前後から他者への興味・関心が増し、対人的認知スキル等において伸びが見られた。本講演ではこれら一連の研究をもとにASD児者の言語習得および使用について考察する。

参考文献:
– 松本敏治 (2017) 自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く. 福村出版. 文庫版 (2020) 角川ソフィア文庫.
– 松本敏治 (2020) 自閉症は津軽弁を話さないリターンズ コミュニケーションを育む情報の獲得・共有のメカニズム. 福村出版.

松本敏治氏について:
公認心理師、特別支援教育スーパーバイザー、臨床発達心理士。
1987年、北海道大学教育学研究科単位取得退学、1999年、博士(教育学)取得。1987-1989年、稚内北星学園短期大学講師。1989-1991年、同助教授。1991-2000年、室蘭工業大学助教授。2000-2003年、弘前大学助教授。2003-2016年9月、弘前大学教授。2011-2014年、弘前大学教育学部附属特別支援学校長。2014-2016年9月、弘前大学教育学部附属特別支援教育センター長。
2016年10月より、発達障害当事者の会である教育心理支援教室・研究所『ガジュマルつがる』代表。
発達障害児・者の支援に取り組みながら、自閉スペクトラム症児・者の方言使用からみた言語・コミュニケーション特性の研究に従事。

[終了しました]第8回共創言語進化セミナー(米納弘渡氏)見逃し配信 (3/3まで)

新学術領域「共創言語進化」http://evolinguistics.net/ 主催の第8回共創言語進化セミナー見逃し配信のお知らせをさせていただきます。ご興味のある方、ぜひご参加下さい。
(なお、第9回「自閉症は津軽弁を話さない」(松本敏治氏、2/22開催)については、http://evolinguistics.net/event/#event1292 をご参照下さい。)

第8回共創言語進化セミナー 見逃し配信
タイトル: 言語と言語能力の共進化に対する構成論的アプローチ
(Constructive approach to the co-evolution of language and linguistic ability)
講演者: 米納弘渡 (名古屋大学大学院 情報学研究科 複雑系科学専攻 特任研究員)

言語 : 日本語
配信期間: 2021/2/15(月)12:00-2021/3/3(水)15:00
申込サイト: https://forms.gle/dV5WqcLUNZm1nJw69
概要 :
人類の言語能力は,言語それ自体の文化進化(古英語から英語への変化など)と,言語使用に必要な言語能力(高い認知能力に必要な脳容量,多様な音声のための声帯など)の生物進化の相互作用で創発してきたと考えられる [Azumagakito 2018, Smith 2018].また,言語には,思考能力の拡張とコミュニケーション能力の拡張の2側面があり[Harman 1975, Reboul 2015],それぞれ本領域の中心テーマである階層性と意図共有に対応する.
これらの異なる時間スケールと機能的側面が関わる相互作用を理解する上で,各構成要素の要点を抽出し組み合わせたモデルを「創って動かすことで理解する」構成論的アプローチが有用である.本講演では,言語と言語能力の共進化に関する次の2つの構成論的モデル研究を紹介する.
言語と言語能力の共進化において,学習は両者をつなぐ重要な役割を果たしてきたと考えられる.そこで,言語能力は多数の下位機能による創発的特性であるとの観点に基づき,複雑な形質間相互作用を想定した個体学習と社会学習の進化モデルを構築した[Yonenoh 2019].各個体は整数の形質値を複数持ち,言語の認知的側面(自身の持つ形質構成)とコミュニケーション的側面(相手個体を含めた形質構成)において,より多数の相互作用が存在するほど適応性が共創的に(相乗的に)生じる.実験の結果,学習は適応進化を促進しうること(ボールドウィン効果)や,社会学習(適応的情報の共有)と個体学習(試行錯誤的な新奇情報獲得)が相補的に働くことが重要であることなどが示唆された.
言語の起源は共同狩猟や死肉あさり等の協力的な資源獲得が関係してきたと指摘されている[Bickerton 2011].一方,人類社会は当初の有限で物質的な資源から,知識などの無限に複製可能な情報的な資源を共有するよう変化しているといえる.そこで,次の構成論的モデルを構築した[Yonenoh 2020, in press].極座標(動径:表現力,偏角:構造)で表現された言語空間上に各言語が点で表現される.各生物は扇型の領域(可塑性)で表され,領域内に存在する言語を共有する個体間で共同資源を獲得し分配される.資源有限性,言語の表現力,共創的利益,認知的競合,可塑性維持コストに基づく適応度で生物集団が進化すると同時に,言語使用に応じて言語集団も文化進化する.実験の結果,言語の表現力と生物の言語能力が断続平衡的に増加する様子が観察され,資源有限性の減少(情報化)は言語の適応進化を促進するが,多様化を抑制する傾向があることなどがわかった.
最後に,将来のコミュニケーションのあり方に対するこれらの知見からの示唆について検討する.

参考文献:
– Yonenoh, H., Suzuki, R. and Arita, T. (2019), Effects of individual and social learning on the evolution of co-creative linguistic communication, Artificial Life and Robotics, 24: 534-541.
– Yonenoh, H., Suzuki, R. and Arita, T. (in press), A shift from material to informational aspects of shared resources can promote language evolution, Advances in Artificial Intelligence (8 pages).

米納弘渡氏について:
2016/3 筑波大学大学院システム情報工学研究科修了。社会経済博士。東京大学大学院工学系研究科特任研究員を経て、2018/4より現職、新学術領域「共創言語進化」C01創発構成論班研究員。言語進化・協力の進化・金融市場を対象に、複雑系科学(部分と全体)と進化ゲーム理論の観点から、実験経済学、エージェント・シミュレーションの手法で研究を行う。

共催:科学研究費補助金基盤研究(B)「再帰的結合と身体性を基盤としたアブダクションによる他者意図推定の研究」

[終了しました]第8回共創言語進化セミナー(米納弘渡氏)のお知らせ 2/11 17:00 Zoom

新学術領域「共創言語進化」http://evolinguistics.net/ 主催の第8回共創言語進化セミナーのお知らせをさせていただきます。ご興味のある方、ぜひご参加下さい。
(なお、第9回「自閉症は津軽弁を話さない」(松本敏治氏、2/22開催)については、http://evolinguistics.net/event/#event1292 をご参照下さい。)

第8回共創言語進化セミナー
タイトル: 言語と言語能力の共進化に対する構成論的アプローチ
(Constructive approach to the co-evolution of language and linguistic ability)
講演者: 米納弘渡 (名古屋大学大学院 情報学研究科 複雑系科学専攻 特任研究員)

言語 : 日本語
日時 : 2021/2/11 (木・祝) 17:30-19:00
申込サイト:https://forms.gle/8BBzdxuJNZeiGNzT9
概要 :
人類の言語能力は,言語それ自体の文化進化(古英語から英語への変化など)と,言語使用に必要な言語能力(高い認知能力に必要な脳容量,多様な音声のための声帯など)の生物進化の相互作用で創発してきたと考えられる [Azumagakito 2018, Smith 2018].また,言語には,思考能力の拡張とコミュニケーション能力の拡張の2側面があり[Harman 1975, Reboul 2015],それぞれ本領域の中心テーマである階層性と意図共有に対応する.
これらの異なる時間スケールと機能的側面が関わる相互作用を理解する上で,各構成要素の要点を抽出し組み合わせたモデルを「創って動かすことで理解する」構成論的アプローチが有用である.本講演では,言語と言語能力の共進化に関する次の2つの構成論的モデル研究を紹介する.
言語と言語能力の共進化において,学習は両者をつなぐ重要な役割を果たしてきたと考えられる.そこで,言語能力は多数の下位機能による創発的特性であるとの観点に基づき,複雑な形質間相互作用を想定した個体学習と社会学習の進化モデルを構築した[Yonenoh 2019].各個体は整数の形質値を複数持ち,言語の認知的側面(自身の持つ形質構成)とコミュニケーション的側面(相手個体を含めた形質構成)において,より多数の相互作用が存在するほど適応性が共創的に(相乗的に)生じる.実験の結果,学習は適応進化を促進しうること(ボールドウィン効果)や,社会学習(適応的情報の共有)と個体学習(試行錯誤的な新奇情報獲得)が相補的に働くことが重要であることなどが示唆された.
言語の起源は共同狩猟や死肉あさり等の協力的な資源獲得が関係してきたと指摘されている[Bickerton 2011].一方,人類社会は当初の有限で物質的な資源から,知識などの無限に複製可能な情報的な資源を共有するよう変化しているといえる.そこで,次の構成論的モデルを構築した[Yonenoh 2020, in press].極座標(動径:表現力,偏角:構造)で表現された言語空間上に各言語が点で表現される.各生物は扇型の領域(可塑性)で表され,領域内に存在する言語を共有する個体間で共同資源を獲得し分配される.資源有限性,言語の表現力,共創的利益,認知的競合,可塑性維持コストに基づく適応度で生物集団が進化すると同時に,言語使用に応じて言語集団も文化進化する.実験の結果,言語の表現力と生物の言語能力が断続平衡的に増加する様子が観察され,資源有限性の減少(情報化)は言語の適応進化を促進するが,多様化を抑制する傾向があることなどがわかった.
最後に,将来のコミュニケーションのあり方に対するこれらの知見からの示唆について検討する.

参考文献:
– Yonenoh, H., Suzuki, R. and Arita, T. (2019), Effects of individual and social learning on the evolution of co-creative linguistic communication, Artificial Life and Robotics, 24: 534-541.
– Yonenoh, H., Suzuki, R. and Arita, T. (in press), A shift from material to informational aspects of shared resources can promote language evolution, Advances in Artificial Intelligence (8 pages).

米納弘渡氏について:
2016/3 筑波大学大学院システム情報工学研究科修了。社会経済博士。東京大学大学院工学系研究科特任研究員を経て、2018/4より現職、新学術領域「共創言語進化」C01創発構成論班研究員。言語進化・協力の進化・金融市場を対象に、複雑系科学(部分と全体)と進化ゲーム理論の観点から、実験経済学、エージェント・シミュレーションの手法で研究を行う。

共催:科学研究費補助金基盤研究(B)「再帰的結合と身体性を基盤としたアブダクションによる他者意図推定の研究」

第4回「HiSoPra*研究会(歴史社会言語学・歴史語用論研究会)」のご案内(3/12,(金), オンライン開催)

3月12日に第4回HiSoPra研究会を開催することとなりました。
特別企画は,昨年中止になってしまった
《討論》 「言語の形成過程をめぐる社会的類型化は可能か」を開催いたします。
ぜひご参加いただけますと幸いです。

—-
第4回 HiSoPra*研究会(歴史社会言語学・歴史語用論研究会)
HiSoPra* : HIstorical SOciolinguistics and PRAgmatics

日時:2021年3月12日(金)13:30~16:30
開催方法:Zoomによるオンライン開催
参加費:不要

13:30-13:35 導入
13:35-14:20 《研究発表》髙橋 圭子(フリーランス)
「中古和文における聞き手配慮の敬語使用」
14:30-16:30 特別企画 《討論》「言語の形成過程をめぐる社会的類型化は可能か」
話題提供:渋谷 勝己(大阪大学) 指定討論:堀江 薫(名古屋大学)
司会:森 勇太(関西大学)

今回の特別企画では,言語の形成/変容過程と,それを取り巻く社会的な状況の関係という,古くて新しい問題にスポットライトを当てたいと思います。
例えば日本語を例にしたときに,標準語の形成過程,方言(さらには個々の方言)の形成過程,海外の日系人社会で使用される変種の形成過程などに,それぞれ,
特徴的な言語変化のタイプというのはあるのでしょうか。逆に言えば,「このような社会的な状況においてはこのような言語変化が起こり,このような日本語変種が生じやすい」といったことは言えるのでしょうか。
本企画では,最初に,言語変化と社会の関係を考えるための素材や枠組みを,
渋谷勝己氏に提供していただきます。その後,言語類型論的な観点から堀江薫氏にコメントをいただいた後,会場全体で議論を深めていきたいと思います。
当日は,さまざまな言語の事例を取り上げられればと思います。多数の方のご参加をお待ちしております。

16:40-18:00 懇親会 Zoom

研究会にご参加くださる方は事前申し込みをお願いいたします。
下記ページGoogleフォームより必要事項を記載してください。
締め切りは3月5日(金)です。

https://forms.gle/EjHV1pupFdESkJXx5

必要事項:メールアドレス,研究会出欠,お名前,ご所属,ご専門(領域)


HiSoPra*研究会事務局
hisopradesk@gmail.com

[終了しました]第9回共創言語進化セミナー(松本敏治氏)のお知らせ 2/22 15:00 Zoom

新学術領域「共創言語進化」http://evolinguistics.net/ 主催の第9回共創言語進化セミナーのお知らせをさせていただきます。ご興味のある方、ぜひご参加下さい。
(なお、第8回は2/11(木)の夕方開催を予定しています。内容が固まりしだいアナウンスいたします。)

第9回共創言語進化セミナー
タイトル: 自閉症は津軽弁を話さない
(Autistic children rarely talk in Tsugaru dialect)
講演者: 松本敏治(教育心理支援教室・研究所 ガジュマルつがる 代表)
言語 : 日本語
日時 : 2021/2/22 (月) 15:00-17:00 (少し延びる可能性あり)
申込サイト:https://forms.gle/ykUwFbL9L3WKtKHz7
概要 :
青森県津軽地方の保健師・特別支援教育関係者の間には「自閉症は津軽弁を話さない」という風聞が存在する。これをきっかけに行った全国調査では、ASD児者の方言使用が少ないという印象が全国で見られる普遍的なものであることを示した。また、青森・高知の特別支援学校で行った方言語彙・共通語語彙使用の調査は、ASD児の方言語彙使用が非ASDに比べて少ないとする結果を示した。方言には相手との心理的距離の近さを表す働きがあることから、ASD児者の方言不使用は心理的距離の理解不全によるのではないかという解釈が考えられた。しかし、この解釈ではASD幼児に見られる方言不使用を説明することは難しい。方言主流社会の子どもは、周囲の人々が話す方言とテレビ・DVD等メディアからの共通語という2つのことばに曝されている。共同注意・意図理解・自己化などに困難を抱えるASD幼児では周囲のことば(方言)を習得できず、繰り返し再生視聴可能なメディアや組織的学習を通じ場面とことば(共通語)をパターンとして結びつけている可能性が考えられた。関西在住のASD青年に関する詳細な育児日誌からは、DVDの場面を再現しながらセリフを真似し、現実場面に当てはめて使用する様子が確認された。また、それまで共通語を話していたがある時期から方言を話すようになった事例においては、方言使用の前後から他者への興味・関心が増し、対人的認知スキル等において伸びが見られた。本講演ではこれら一連の研究をもとにASD児者の言語習得および使用について考察する。

参考文献:
– 松本敏治 (2017) 自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く. 福村出版. 文庫版 (2020) 角川ソフィア文庫.
– 松本敏治 (2020) 自閉症は津軽弁を話さないリターンズ コミュニケーションを育む情報の獲得・共有のメカニズム. 福村出版.

松本敏治氏について:
公認心理師、特別支援教育スーパーバイザー、臨床発達心理士。
1987年、北海道大学教育学研究科単位取得退学、1999年、博士(教育学)取得。1987-1989年、稚内北星学園短期大学講師。1989-1991年、同助教授。1991-2000年、室蘭工業大学助教授。2000-2003年、弘前大学助教授。2003-2016年9月、弘前大学教授。2011-2014年、弘前大学教育学部附属特別支援学校長。2014-2016年9月、弘前大学教育学部附属特別支援教育センター長。
2016年10月より、発達障害当事者の会である教育心理支援教室・研究所『ガジュマルつがる』代表。
発達障害児・者の支援に取り組みながら、自閉スペクトラム症児・者の方言使用からみた言語・コミュニケーション特性の研究に従事。